蝸牛日記(Pseudomenos版)

嘘ばかりの日記です

読書

天帝のめでたまう孤島(古野まほろ/講談社ノベルス)

★★★★半【ネタバレ全開、注意!】これは。 これは。 参りました。 どんでん返しのその向こう、人外の人非人、外道の中の外道、壊れた探偵、我らが主人公古野まほろ@作中が、ここまでの扱い様。シリーズも第三弾、学園モノ、列車モノと来て堂々の孤島の屋敷モ…

海獣の子供(1、2巻)(五十嵐大介/小学館)

★★★★★ 本年最高の2冊。『魔女』でその能力を知っているつもりだったけれど、これだけの物語を、この密度と深さで描き続けられる才能は、ここ十年なりで唯一、最高のものだと思う。作家に例えれば池澤夏樹が近い気がするが、池澤よりももっと呪術の気配が濃く…

今日の早川さん(coco/早川書房)

★★★ これが岩波書店から出ていたらさぞ面白かったろうに、というか、それってすごいじゃん! な一冊。早川から刊行されるのは、当然の流れというか、粋な計らいという感じもしなくもないが、他にとられてなるものかという側面も大きいだろうし...そういう推…

新本格魔法少女りすか3(西尾維新/講談社ノベルス)

★★★ 長らく積ん読状態だったのを救い出してあっという間に消化。2005年中に書かれた短編3本がまとめられている。刊行が本年の春で、いささか時間がかかりすぎだと思うが、どうか。いま、著者は講談社BOXシリーズで手一杯だろうし、この後の完結への4編が書か…

精霊の守り人(上橋菜穂子/新潮文庫)

★★★半 今話題の、というか、今夏話題だった国産ファンタジー。各メディアのほめっぷりが大げさすぎて却って作者に失礼な気がするが、確かに面白く読んだ。主人公が30代の職業女性というのがいい。浮ついておらず、人間的な悩みは十分に持ち、頼りにもなる。…

膚の下(下)(神林長平/ハヤカワ文庫)

★★★★★ 満点の五つ星。『あなたの魂に安らぎあれ』『帝王の殻』に続く火星ものの第三弾。おそらくはこれでシリーズ完結だろう。思えば『あなたの魂に安らぎあれ』から神林を読み始めたので、約20年、読み続けてきたことに。感慨が大きかった。 その時々に読ま…

膚の下(上)(神林長平/早川文庫)

★★★★ 上巻読了。どんどん面白くなってくる。いつにもまして思弁的な内容で面白い。 膚(はだえ)の下〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)作者: 神林長平出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2007/03メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 46回この商品を含むブログ (67件) を見…

ぼくらの 7巻(鬼頭莫宏/IKKI COMICS) 

★★★★ 登場人物紹介をみて物語の進行度合いを実感。もう9人も失われていたのだ。この巻のパイロットは、軍人の娘にしてピアノ弾きの古茂田孝美、ニュースキャスタの娘往住愛子。共に親子の関係に強いスポットが当たる。前者の最期はちょっとベタなくらいに美…

出たとこ勝負のバイク旅・海外編 バイクの島、マン島に首ったけ(小林ゆき/えい文庫)

★★★半 バイクが欲しくなってからいろいろ調べ始め、マン島のレースのことを思い出した。マン島はアイルランドとグレートブリテン島の間に位置する小さな島で、世界最古の民主主義議会を持つ変わった島だ。1907年から今年で101年、ツーリスト・トロフィと銘打…

オートバイ・ライフ(斎藤純/新潮新書)

★★★ 小説家によるメンタルな、そして思索としてのオートバイライフについての考察。実用的な用途を目的にするとあてが外れるが、バイクに乗るという「こと」について興味があれば面白く読めるはずだ。啓蒙書ではないが、思索の本ではあるので、そういうのが…

カボチャの冒険(五十嵐大介/竹書房)

★★★半 今読むべきマンガと、今後読み次がれていくべきマンガっていうのがあると思うのだけど、五十嵐大介のマンガは今後読み次がれていくべきマンガだ。内容に普遍性がある。時節に影響されない強さがある。本作は作者が共に暮らす猫「カボチャ」の、田舎暮…

愛人[AI-REN](1〜5巻)(田中ユタカ/白水社)

★★★★半 白水社のアニマルでの連載終了が2002年。あれから5年経って、単行本で一気読みしたのだけど、よかった。ほんっとうに良かった。作者が連載終了後、一時描けなくなったのも分かる、そのくらい集中した重い仕事だった。4巻から5巻にかけての、圧倒的な…

一角獣の繭(篠田真由美/講談社ノベルス)

★★★ いよいよ物語りもクライマックスに近づいた、ということだが、本当にあと数冊でとりあえずの終止符というか線を引けるのだろうか? 年1冊のペースなので、通常の5割増くらいの量の作品が用意されているのだろうか? というメタな部分が気になる今日この…

ダウン・ツ・ヘヴン(森博嗣/中公文庫)

★★★★ 空中戦の描写が圧巻。読んでいて臨場感が物凄い。飛行機の構造については疎い自分でも、機体が空を飛び回る様がリアルに目の前に描けるのだから、相当なものだ。草薙の物語も三作目にして相当に見えてきて、物語としても読者としてだいぶはまってくると…

東京奥多摩のヒカリ(磯本つよし/少年画報社)

★★★ 奥多摩を舞台としたバイクマンガ。某『逮○○ちゃうぞ』を髣髴とさせるバイクのりの女性駐在さんが主人公だ。駐在さんがドリーム50とかドゥカで激走するバイクを追跡しちゃったりする、相当にありえない設定。ただし、作者のバイクへの情熱というか愛がび…

島泰三『安田講堂1968-1969』(中公新書)を購入、読みながら帰ってきた。 前に書いたこともあるが、学生運動というものがまだピンと来ない。当時のことを書いた本を読むことで、個人的な思いを感じられても、彼らが何を求めていたのかがどうも腑に落ちないの…

天使が開けた密室(谷原秋桜子/創元推理文庫)

★★★ 読後あとがきにてもともと富士見ミステリー文庫収録の作品であったことを知る(『激アルバイター・美波の事件簿 天使が開けた密室』)。もともとライトノベルだったのね。 主人公倉西美波は16歳の女子高生。5年前に海外で失踪した父親を探すためにアルバ…

朝日ソノラマ店じまい

朝日ソノラマが店じまいをするというニュースをtwitter経由で知る。朝日ソノラマといえばクラッシャー・ジョウ、中学にあがったばかりの頃、友人がこれを読んでいて、自分も追いかけはまったのだった。思えば、それがSF初めである。ダーティーペアシリーズよ…

沈黙のフライバイ(野尻抱介/ハヤカワ文庫)

★★★★ 『太陽の簒奪者』にて自分の中で好評価を得ていた野尻抱介の短編集。いやこれが実に面白かった。なにが良いといって、全編通じて溢れる宇宙への意思である。とにかく宇宙へ行きたい、遠くへ、まだ見ぬ星の世界を見たい、行きたいといった強い意志が一杯…

ゲーム的リアリズムの誕生/(東浩紀・講談社現代新書)

★★★ 前著『動物化するポストモダン』の第2段という位置付けだが、今回はさまざまな作品への批評を載せることでより実際的な批評の展開を見せている。特に付録で収録されている『AIR』評が興味深い。この手の批評は割と好きなのだが、批評対照となったゲーム…

イナイ×イナイ(森博嗣/講談社ノベルス)

★★★ 新シリーズXシリーズの第1冊目。某保呂草氏と見られる椙田氏の事務所で働く2名が一応主人公なのかな? 舞台は東京都内と見られる。話の展開、トリックにも特別に新しいものは見られない(多分大方の読者は犯人や構造をだいたい予測できるはずだ)が、こ…

糖尿病は薬なしで治せる/渡邊 昌・角川oneテーマ21

★★★ 先日の健康診断の結果、ついに血糖値がE判定、要治療となってしまった。もともと父の家系が糖尿病の気のあるもので、僕も入社以来ずっと健康診断では血糖値で引っ掛かり再検査を受けてきた。この間だいたい124ミリグラムくらいの値で、一度だけ134という…

ボトルネック(米澤穂信/新潮社)

★★★半 まずいつもどおり、下記進んでいるうちにネタバラシする可能性があるのでそういうのが嫌な人は心しなくていいのでパスしてください。 で、うーむ。帯にある通り、青春小説なのだが、長いトンネルのむこうには出口があることを期待するわけで、ええと、…

メフィスト 第45巻5号(講談社)

連休中ということで少し集中して読む。いくつかは自分でも謎が判明できてなんとなく気分がいい。北山猛邦の『妖精の学校』は場所が謎となっているわけだが、これは予想通りあの島。関連のHPをざっと見て回ったけど、なんとなく空恐ろしくなるのはやはりあま…

妙なる技の乙女たち(第6話)(小川一水著/ポプラ社)

★★★半 月刊 asta* May 2007 Vol.7 収録。asta*自体を見つけたのが昨日、ポプラ社だから児童書、という思いこみがあったのだがどうしてこれがすばらしい内容。浅暮三文と小川一水が並んでいるあたりでもう胸ときめき心躍っているわけだが、大森望むの書評はあ…

これが食わずにいられるか?

僕は今34だが、このくらいの歳になると好きなものにぶれがなくなる。つまらない気もするが、多少は安定しなければ大人になった甲斐がない。いや、やっぱりそれはつまらないことか。 それはともかく。ユリイカの米澤穂信特集に引っ張られて彼の小説を読み返し…

ユリイカ2007年4月号(青土社)

米澤穂信特集。毎度のながら痛いほどツボをついてくるユリイカ。図書館で発見、そのまま書店に向かい迷わず購入。滝本竜彦との対談がかなり笑える、なんだこのノリのよさは。意識して校正してるのではないかと思うけど、西尾維新調のボケと突っ込みが。ケー…

続・水惑星年代記(大石まさる・少年画報社)

★★★★ ヴィヴァ、センス・オブ・ワンダー! おなじ世界を舞台にしたゆるいつながりをもつ作品の連作集。その中で一番ボリュームのある Around The World In 8 Days は鶴田謙二トリビュートなSOW作品。話としてはオーソドックスな80日間世界一周旅行亜種だが、…

鼠坂(森鴎外/青空文庫)

★★★ 鴎外の文体は昔から妙になじむので好きだ。 小日向から音羽に抜けるあたりにあるという鼠坂、その空き地に趣味の悪い和洋折衷の邸宅が建つ。聞けば満州で儲けた男の家だという。その新築祝いに集まった男たち。やがて酒宴の話題は記者小川の過去の話とな…

『天帝』その後

ネットであれこれ巡回しているが、けなされっぷりと言うか評価低っ! まぁわかるけどね、文体とか、これはもう駄目な人が多いな、と。しかしあえて言うが面白いぞ? 久しぶりに読んでいて情景がぽこぽこ浮き上がってきたし、世間の皆様と僕の回路の違いをな…