蝸牛日記(Pseudomenos版)

嘘ばかりの日記です

天使が開けた密室(谷原秋桜子/創元推理文庫)

★★★
読後あとがきにてもともと富士見ミステリー文庫収録の作品であったことを知る(『激アルバイター・美波の事件簿 天使が開けた密室』)。もともとライトノベルだったのね。
主人公倉西美波は16歳の女子高生。5年前に海外で失踪した父親を探すためにアルバイトに明け暮れている。しかし天性のトラブル巻き込まれ型なのか、美波は次々と望まない事件に遭遇する。そんな彼女をサポートするのは親友の宝塚系かつ江戸っ子な美人立花直海、公家の直系お嬢様西園寺かのこ。さらに隣家の『天敵』こと藤代修矢を探偵役に物語は進む。
正直、あまりに主人公が性格に難のある嫌な人物にばかり泣かされるので、前半はすこし辟易としていたのだが、中盤から話がのってくると気にならなくなった。キャラがたった設定はラノベならではだが、ミステリとしてしっかり組み立ててあって好感が持てる。夫の失踪後自らふけることを選択した(に違いないとされる)美波の母親がなかなかおいしい性格。文体その他、肌に合うか心配だったが、それなりに面白かったので続刊も買ってきた。しかし富士見ミステリー文庫から創元推理文庫への移籍とはこれは大出世である。最近の創元推理文庫は幅が広くなって色々と楽しい。少しおさえた装丁も品良く気に入っている。

天使が開けた密室 (創元推理文庫)

天使が開けた密室 (創元推理文庫)