蝸牛日記(Pseudomenos版)

嘘ばかりの日記です

回帰祭(小林めぐみ/早川文庫)

★★★半
疲弊した地球からの脱出船の一隻が、とある惑星に不時着して300年。男女比9対1という偏った出生率と、増える人口への対応の為もあり、毎年一度、故郷地球へと『回帰』する宇宙船が建造されては送り出されていた。回帰を間近に控えたアツ、ライカ、ヒマリら16歳の少年少女は閉鎖社会ダナルーの秘密に関わることとなる。
前半はまったりジュブナイル、後半サスペンスホラー色を盛り込んで最後は青春小説へ帰結するという、あれこれ詰まった一冊。AMAZONやSack Stock Booksでの評を見ると後半の展開への不満が結構見られるが、むしろ結末はさっぱりしていて好きだった。確かに、世界の描写という点で、いろいろ足りないといわれるとそういう面もあるのかもしれないが、一番描きたかったのは閉鎖空間に生きる少年少女に、どのように光が差すかということだったろうから、その点ではいい結末だと思った。

回帰祭 (ハヤカワ文庫JA)

回帰祭 (ハヤカワ文庫JA)