蝸牛日記(Pseudomenos版)

嘘ばかりの日記です

読む音楽(DJ Technorch)

C75の収穫物の中で最大最高の収穫。「純粋音楽」(いわゆる楽曲そのもの)に捕われず、「読む音楽」(音楽コンテンツを含む周辺コンテンツの集合。パッケージや楽曲の背景となる物語、世界等々まで)を含めて音楽を楽しむ事を説く。DJ Technorch自身のサイトで下記綴ってきた記事の集大成だが、Gabba、テクノ/トランスの紹介の書としても読めるし、同人音楽入門としても読め、この世界の広がりや概略はもとより、空気を掴むのに最適。
なにより僕自身の音楽へのアプローチに非常に近い事をしていて(楽曲を聴く前に紹介書等を読みまくったりする)共感。僕もグールドなどはまず解説というか評伝から入ったしなぁ。グレッグ・ベアの『無限コンチェルト』を読んでマーラーを聴いてみたりもしている。文字情報の方がなまじ音がない分妄想を膨らまさせる効果が大きいが、本書でもその部分を大きく取り上げている。結構同じような人、いるんじゃないかと思った次第。
同人音楽の多くがネット経由で無料で入手可能であるにも関わらず、コミックマーケット等の即売会でパッケージとして販売され、ちゃんと売れていくという件にも大いに納得。パッケージ買いは十分あるし、さらに(中身の音楽が趣味でなくても)パッケージの為にするジャケのみ買いも僕は時々する。そうした音楽の周辺コンテンツ、読む音楽を楽しむ事がなぜ邪道視されるか? それを中心とした楽しみ方もまた、音楽の楽しみとして十二分にあり得るのではないか、という書。いいものはいい、好きなものは好き、というシンプルだがこれ以上にない結論にもうなづける。特にニコ動好きならば迷わずに買うべき。
なお、デッドボールP、槇タケポンらの寄稿、海外レーベルへのインタビュー記事等のコラムも充実しているので、そちら方面のファンの方にもお勧め。
連動して、ユリイカの2008年12月臨時増刊号「総特集 初音ミク ネットに舞い降りた天使」も必読。ここでもDJ Technorch東浩紀濱野智史伊藤剛、谷口文和の対談を読む事ができます。

読む音楽 完全版

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