蝸牛日記(Pseudomenos版)

嘘ばかりの日記です

『躯体上の翼』

昨年の『ニルヤの島』(柴田勝家)に引き続き、今度は『躯体上の翼』(結城充考)を無くした。

前回はソラシティのトイレだったが、今回は山手線終電。神田から乗車して、新橋で降りるつもりだった。クライマックスに差し掛かった物語が、睡眠不足と酔をいなしてくれると思っていた。甘かった。

気がつけば列車は大崎駅で停車しており、いつものように、降りた記憶も曖昧に、改札の前で大崎駅にいることを認識した。タクシー等を活用してなんとか帰宅はかなったが、文庫本は忽然と消えた。翌朝、続きを読もうとカバンを覗き込んで気がついた。もう助からない。

読みさしの部分はヒロインの員(えん)がついに道士に相対するシーンで、物語は疾走していた。読みはじめ少し怠い感じに思い、少し読んでは放置を繰り返してきた本だけれども、ついに読み手と本の波が合致してまさにトラパーに乗っているところだった。帰宅して自宅の机付近を探しても出てこない。半ば書籍置き場と化しているベッドの片隅にもない。山手線に置いてきたのだろうか。

『ニルヤの島』のときはその後図書館に頼ったが、それは物語が後半に突入したくらいのあたりで、のめり込んでいたもののまだちょっと距離を置いても大丈夫なくらいの距離感だったからで、偶然図書館に蔵書されていることが分かって大変助かったのだけれども、今回はそうは行かない。ア・バオア・クーで、シャアとアムロが睨み合ったくらいの場面で、そんな所でやめられるわけもなく、素直にKindle版を買った。表紙が30年位前のハヤカワ文庫っぽかったこともある。初期神林の『あなたの魂に安らぎあれ』とか『プリズム』とかああいう手描きのテイストで好きだった。そうだ、『プリズム』は墨に青で、まさに合致するんだな。

朝、観念してKindle版をポチって、そのまま出社する間で読了。タイトな筆致は生きすぎてしまった2人を一気に最後まで運び、そのまま駆け抜けていくもので、うん、買い直したのは正解でしたね。

ということで諸君、飲んだら本を広げちゃダメだぞ。

躯体上の翼 (創元SF文庫)

躯体上の翼 (創元SF文庫)

ニルヤの島 (ハヤカワ文庫JA)

ニルヤの島 (ハヤカワ文庫JA)