蝸牛日記(Pseudomenos版)

嘘ばかりの日記です

崖の上のポニョ

★★★★★
ワーナーマイカルみなとみらいにて『崖の上のポニョ』を見る。夏休み最後の日曜日ということもあってか、映画館は盛況で、ぽにょは到着時点で次の次の会まで売り切れ。もっとも、事前にネット予約していたので、のんびりと昼食を摂ることができた。
さて。前評判というか実際に見た人の感想が「よかった!」という人と細かなことをあれこれ言う人に二分されていたので興味があったのだが、素晴らしい出来でした。宮崎映画の中でも相当に上位に持ってきていい内容です。
まず作画。デジタルを一切廃して製作された画面の圧倒的な存在感と迫力、温かみがストレートに胸を打ちます。動きとしてはコナンをそこはかとなく思い出したけど、厚みがぜんぜん違う。細部の辻褄をわざと合わせていないから、整合性は取れていないのだけど、その分迫力がある。冒頭のくらげの群れなど、デジタル処理したい光の再現のややこしいところも丁寧かつ大胆に描いていて圧倒される。手仕事って凄い。例えばそれは『王立』のロケットの薄氷が落ちる部分(例の、庵野が黙々とやったという奴)もそうだし、説得力がありますね。もちろん、手描きを絶対視するつもりはないけれど、よく描かれた手仕事の絵の迫力っていうのはあると思う。アナログ凄い。
デジタルは、ウォッカみたいなもので、いい酒はひたすらに水に近くなるといったのは開高健だったけど、デジタルの凄さってそういう描写だと思う。アナログはもっと雑味があって、例えば上等なワインのような、極めていった先の感覚への酩酊作用が高いみたいな。描写したいのに、奥がありすぎて描写できないような。
ストーリィはかなりベタなものだし、いい意味でひねりが無くて、こどもマンガとして正しく出来ていると思う。大きなお兄さんが大きなお兄さん諸氏を意識して作った作品ではまったくない。ちゃんと子供へ向けてストレートに作って、質が高いから大人も楽しめる、そういう内容だと思う。僕はもう絵の動きとか厚みとかで涙ぐんでいたんだけど、隣で娘たちは大うけにうけて見ていた。凄く正しい。ここ何作かの宮崎作品の中では一番好きだ。
蛇足だが、宗助のおかぁさん、リサさんが最高に素敵です。こんな人、いたらイチコロ。最高です。
映画『崖の上のポニョ』公式サイト