蝸牛日記(Pseudomenos版)

嘘ばかりの日記です

φは壊れたね(森博嗣/講談社ノベルス)、ウィトゲンシュタイン入門(永井均/ちくま新書)

★★★
ノベルス新シリーズ。メンバも一新というか、世代交代して、(少し?)大人になった西之園萌絵にこそばゆい感じを味わう。新キャラで、このシリーズのブレーンかと思われる海月及介、雑誌「海月」に関わる身としてはこれまた妙な気分。『海月」次号で取り上げてもらいたいな。
賞ごとに挿入される引用は今回はヴィトゲンシュタインの「論考」。ついこの前まで「ウィトゲンシュタイン入門」(永井均/ちくま新書)を読んでいたので、妙にシンクロしてまたまた不思議な気分。
さて、シリーズの舞台は旧シリーズのN大からC大に移った。C大にはかの国枝桃子女史がおり、女史のもとにN大院生(D2)となっている西之園萌絵がいる。国枝研に所属する山吹早月(やまぶきさつき/♂)、加部屋恵美(かべやめぐみ/♀)、海月及介(くらげきゅうすけ/♂)が今回の主要メンバらしい。
以下プチネタバレあり。
密室と見なされるマンションの一室で起きた不可解な殺人事件。奇妙に装飾された死体とその置かれた状況。たまたま事件に関わってしまった山吹と友人たちは、事件を推理してみることに。この辺りの展開は新しいものではないが、事件の奇妙な美しさと、事件全てを暴ききって満足するというスタイルからは遠く離れた主人公たちのあり方が良い。前シリーズ(Vシリーズ)の最終作「赤緑白黒」やS&Mシリーズの「数奇にして模型」のような死体(現場)装飾がここにも受け継がれていて、事件全体が一つの作品になっている。
気になるφについて、作中国枝女史が「空集合」とぼそっと呟いているが、空集合って何?というわけでWikiPediaひいてみました。ふうん。何も含んでいない集合ですか。


集合論の議論をする上で、「何も含まない集まり」「何も集めていない集まり」を集合の一種と考えた方が自然である。

この何も含まない集合 {} のことを空集合 (empty set) と呼(ぶ)

http://ja.wikipedia.org/wiki/空集合


ひたすらしゃべりまくる加部屋女史がいい味を出している。海月のカレーはうまそうだ。今後、これまでのシリーズとどのような差異が出てくるか(あるいは出てこないのか)に期待。
それからブックデザイン気に入りました。フォントディレクションに凸版印刷の紺野氏が入っているのは、「ファウスト」からの流れかな。


Φは壊れたね (講談社ノベルス)

Φは壊れたね (講談社ノベルス)


ウィトゲンシュタイン入門 (ちくま新書)

ウィトゲンシュタイン入門 (ちくま新書)