蝸牛日記(Pseudomenos版)

嘘ばかりの日記です

シン・レッド・ライン

★★★★★
夕べ、カミさんが近所の飲み会に出かけてしまい、だらだらと呑みながらケーブルテレビのチャンネルを変えていてなにやら戦争映画をやっているのを発見。妙に静かな雰囲気と、独特のカメラワークにこれはひょっとしてアレか! と思って視聴。アレでした。見たかったんだけど、見られずにいた『シン・レッド・ライン』。名作でした。死んだ同胞に手を合わせている日本兵がことごとく正座していたのには違和感を持ちましたが、その他はパーフェクト。戦争映画の白眉です。っていっても、いわゆる戦争映画からすると、かなりのアウトサイダでしょうけれど。
華美な戦闘シーンは皆無、かといって『プライベート・ライアン』ほどリアルさに拘泥もせず、戦争の無常を描いています。過剰な叫び声や怒りよりも、ただひたすらに弛緩したように続く戦闘の日々、ひとつの勝利で終わらない、いつまでもだらだらと続く生の奪いあい、その生の奪い合いも、高揚した気持ちではなく、ただ本当に、誰もが消耗しながら、望みもせず、おそらくはお互いに消極的に、しかし他に逃れる道もなく出会ってしまえば奪うか奪われるか、そうした疲労が日常的に続いていく。見れば見るほど、時間がたつほどに、戦争の意味がわからなくなる。兵士たちのモノローグ、回想、ふと逸らした視線が捕らえる東南アジアの美しい自然。彼岸のように流れる空と雲。テーマは無常? と思わせる妙に仏教的な諦観。
すばらしいです。五つ星。

シン・レッド・ライン [DVD]

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