蝸牛日記(Pseudomenos版)

嘘ばかりの日記です

奇跡の100円

しゃれにならない財布状況にある中、ハードな雨に見舞われた。傘はない。錦町の井上揚水と呼ばれる所以だ。カード払いもやむ得ずとコンビニを覗くも傘は売り切れ。どこまでも属性に忠実な私である。覚悟を決めて歩き出せば滴る雨も楽しい帰り道。会社の新人子の口癖が頭を回る。有り得ない、有り得ないから! 腿が濡れて冷たい。こういうときに限って帽子がない。アニキ、雨が冷たいよ。痩せ我慢が限界を迎えた頃に100円ショップが目に入った。小銭入れには数十円<五十円。駄目元で開いた財布にそれは光っていた。平成17年製100円玉。燦然と輝く生まれたての硬貨。奇跡かと恍惚としながら店内を物色する。傘はない。やはり売り切れたか。仕方なくビニルのレインコートを手に取ったとき、店員さんが奥から売れ残りの傘を出してきた。細い柄の、安っちい紫色のナイロン傘。紛れも無いレディース仕様だ。
というわけで今、手元には紫の傘がある。頭の中では「飾りじゃないのよ涙は」が無限リフをキメている。そんな帰り道。