蝸牛日記(Pseudomenos版)

嘘ばかりの日記です

導きの星〈1〉目覚めの大地(小川一水著/角川春樹事務所)

★★★
小川一水ブームはまだまだ続く。4巻ものの1巻目。新任の外文明監察官(Civilisation Observer)辻本司の成長譚。
それほど遠くない未来、宇宙へ進出した人類は非人類の知的生命体と出会う。その後も地球外知的生命体(ETI)は発見されるが、それらの文明のレベルはみな地球人以下であった。今後敵となるとも味方となるとも分からないそうした外文明とどう付き合っていくか。UN(統一国連)はこれらの外文明が適正な文明に成長するよう支援することをきめた。各外文明に対して地球から送り込まれる外文明監査官たち。彼らは終身ひとつの外文明を導く役目を負った...。
というような背景を元に、地球から最遠(412光年)の外文明オセアノ星系に赴任した19歳の新米が悪戦苦闘する。司をサポートするのは一種のアンドロイド、女性型の3人の目的人格(パーパソイド)。なつかしの『マップス』(長谷川裕一)の船たちを髣髴とさせる(これの起源は『歌う船』(アン・マキャフリー)あたりか。やはり船といえば女性、そういえば神林長平の『海賊』シリーズの船にも女性型端末がいたなぁ。例外はトチローの意識を移植されたアルカディア号くらいか?)。限定された「人権」は持つが、被造物としての制約も多く、その辺は『アップル・シード』(士郎正宗)の影響を感じたり。このいささか偏った性格を持つ彼女たちに振り回されつつ、司はスワリス、ヒキュリジという2種族の文明を何とか平和に発展させようと努力はするのだが、これまでのところ争いや分裂を引き起こして一旦撤退、というパターン。どうやら司の睡眠中(彼はコールドスリープのような長期睡眠で時を超え、文明の発展を見守っているのだ)、何らかのミッションを帯びたパーパソイド達が暗躍しているらしい...しかしてオセアノの未来は、そして減衰期に入ってしまった地球文明の未来は! というところまで話は進んでいる。

小川一水の作品に強く感じるのはやはりゲームっぽい設定。今回はシムシリーズに代表されるシミュレーションものがベースになっているように思われる。残念なのは、ゲームを意識してしまうこと、ノベライズ元のなにか作品があるかのような印象をもたされることで、これがなくなると彼の作品ってもっと良くなるんじゃないかなぁ。小説が良くてゲームになりました、というような方向に行くことを期待。

しかし主人公の司君は19歳。19歳ってもっとこう女性に対してなんていうかアレな年頃だと思うのだけど、どうなんだ? 確かにダイレクトな生殖は行われていない設定で(子どもは統連繁殖局が生産している)、親子の関係も薄く、性は性と切り離されているようだが、切り離されちゃったゆえにまた人類も枯れちゃってるという設定なのかしら。人間ではないにしろ人型の殻をそなえた人格では萌えないってことか。性格きつすぎて駄目ってことか。それ以上に自分が担当する外文明がそれどころではない状況であるのはわかるのだが。スワリスに惚れてるバヤイじゃないだろう、とおじさんは思ったりするわけです。

で、深夜から2巻に突入。今後の展開や如何に。

導きの星〈1〉目覚めの大地 (ハルキ文庫―ヌーヴェルSFシリーズ)

導きの星〈1〉目覚めの大地 (ハルキ文庫―ヌーヴェルSFシリーズ)