蝸牛日記(Pseudomenos版)

嘘ばかりの日記です

お兄ちゃんの選択

なんとここでお兄ちゃん、おっさんを起こさずに新聞を膝のまえに広げた。自衛にはでるが積極的な危機の排除にはでない、専守防衛というか、肉を切らせて死んじゃったというか、エアバック付けてブレーキ取り去るみたいな、端から見ていると滑稽なくらいでまどろこしくもあり、根本的な解決を求めないあたりに戦後60年の日本の現状を見るわけで、こんなにも他者との関係に疲れていて大丈夫なのかとか思う引きこもり志望の自分はプットマイセルフオンザシェルフ、まぁ、疲れはてた終電の夜、そんな面倒には関わりたくないというのは人情であろう。日本は疲れているなぁと実感できる瞬間なのである。問題はしかし、ビールがこぼされたときだ。とりあえずおっさんはビールを飲みきったが(これは奇跡? 偶然? それとも必然だった?)、そこへ至らず眠気に任せ、手首を弛緩させ飲み口から黄金色の液体をして豊穣なる滝とせさしめ、その奔流がお兄ちゃんの膝または靴の上に新たな地勢を穿つそのとき、そのときに、自衛権の行使という名目においていかなる惨劇が起きたであろうかと想像するに、被害者はまた一個の加害者としての側面を持つわけで、ハイおっさんそこでヘッドバンキングしないように、かくも終電というものは日本の現在に満ち満ちて夜のただ中を走るのでありました。