蝸牛日記(Pseudomenos版)

嘘ばかりの日記です

ヘビイチゴ・サナトリウム(ほしおさなえ/東京創元社)

☆☆☆
不思議な雰囲気を持つ小説。すこし言葉足らずな印象もあるが、終盤何度も結末がひっくり返っていくのはミステリならではの面白さ。依存とナルシズムについていろいろ考えさせられるが、ナルシズム=自己愛については、特に暗い気持ちにさせられる。自殺はナルシズムの極地だと思うが、いかがか。自殺は自己を世界の中心に強引に据える陶酔だ。もちろん、そうでないものもあるだろう。しかし多くのそれは「私」を世界に強制する行為だ。不幸に苦しみ、あらがう人もあるだろう。しかし同時に、不幸に酔い、可哀相な私にとらわれる人もあるのだ。可哀相な私は文句なしに世界の中心にいる。私は可哀相であるが故に、世界に同情されなくてはならない。また、世界は私を受け入れるべきであるが、私は世界に受け入れられてはならない...世界に受け入れられない私であるからこそ、逆説的に世界に対して加害者のレッテルを貼り、自らは批判を免れる安全圏からそれらを批判し、許すことができる。あるいは、許す振りをすることができる。あるいは、激しく攻めることができる。この実にセルフィッシュな構造。
などということは、本書の本筋からは、多少ずれていると思うが、つらつらと考えてしまった。


ヘビイチゴ・サナトリウム

ほしお さなえ

発売日 2003/12
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