蝸牛日記(Pseudomenos版)

嘘ばかりの日記です

読書

レフト・アローン(藤崎慎吾/早川書房)

★★★半 藤崎慎吾初の短編集。あいかわらず読ませる。そしてラストにしっかりと感動を持ってくる実にうまい小説。「猫の天使」がかわいらしくもしっかりとSFで楽しい。「星窪」のラストは壮大な光景が美しい。マクロなアイディアと僻地とも言える島の老人とが絡…

講書つづき

最近集中して本を購入した。ちょっと財布に糸目をつけていないという感じであるが、それはあくまで僕の財布としては、という程度の話。しかも購入しているのは森博嗣本ばかりである。今日は大船のコーナンに入っている教文堂にて「ミニチュア庭園鉄道」およ…

レタス・フライ(森博嗣著、ささきすばる挿画/講談社ノベルス)

★★★ 収録作は以下の9篇。ネタバレありなので注意。 ラジオの似合う夜 A radiogenic night 檻とプリズム A prism in the cage 証明可能な煙突掃除人 Provable chimney sweeper 皇帝の夢 The imperial dream 私を失望させて Drive me to despair 麗しき黒髪に…

フェアリィ・ランド(ポール・J・マコーリイ著、嶋田洋一訳/ハヤカワ文庫)

★★★ 「華麗なるテクノゴシックSF」ということですけどね。ポップなカバーと表4の文句に惹かれて買ったんだけど、想像とはちょいと異なるその内容、もっと軽いのかと思ってたら、まったりとした内容でした。だいたい主人公はデブの中年男だよ? 20年前だった…

工学部・水柿助教授の逡巡(森博嗣著/幻冬社ノベルス)

★★★ 前作にもまして走りまくるキーボードがとってもすてきぃ、な一作。はぐれはぐらかされしつつも物語は進む、っていうか物語なのか、これ。虚実入り交じってひょっとして私小説とか試しているのでしょうかって読んでいたら突然SFしてみたりしているうちに…

アンダーカレント(豊田徹也/講談社)

★★★★★ アフタヌーンにて連載をしていた長編の単行本化。昨年NO.1コミックといってよいすばらしい出来。これは映画化されるかもしれない。いや、無理か。とはいえ帯のコピー、谷口ジロー氏の「今、最も読まれるべき漫画はこれだ!」に嘘は無い。 主人公は銭湯…

ウィーンとライカの日々(田中長徳/日本カメラ社)

★★★ ウィーンにはゆかり深く、チョートク氏の8年には及ばないが、それでも、合計で1年近く暮らしていた。ウィーンは僕にとって複雑な街だ。一番最初に訪れたときには、祖母と母との壮絶な争いがあり、まだ小学生だった私は疲れ果て、同時に街が嫌いになった。暗く…

導きの星〈1〉目覚めの大地(小川一水著/角川春樹事務所)

★★★ 小川一水ブームはまだまだ続く。4巻ものの1巻目。新任の外文明監察官(Civilisation Observer)辻本司の成長譚。 それほど遠くない未来、宇宙へ進出した人類は非人類の知的生命体と出会う。その後も地球外知的生命体(ETI)は発見されるが、それらの文…

ペリカン文書(下)(ジョン・グリシャム著、白石朗訳/新潮文庫)

★★★ 上巻の後半から物語が加速して、下巻へ。逃亡しつつ真相を探る、とういうサスペンスものお約束なパターンで物語りは進む。FBIとCIAの距離感とか、さらにはホワイトハウスへの彼らの距離感が面白い。影で大統領を操縦するコールの存在もまたよし。主人公と…

ペリカン文書(上)(ジョン・グリシャム著、白石朗訳/新潮文庫)

★★★ 映画かもされたヒット作で、どこかで入手したまま積読状態だったのを救出して読み始めた。ご都合主義的な展開もままあるが、それなりに楽しい。政府の陰謀関係のミステリ/サスペンスって多いけど、アメリカではそれほどに政府筋の問題が多いってことな…

アフターダーク(村上春樹著/講談社)

発売とほぼ同時に入手していたのにもかかわらず、なぜ今読了? 読書に対する欲求に波があって、それがこないと上手に読めない。最近波に乗っていて、本を手放さない毎日だ。先日某ケロケロよりいったいいつ本を読んでいるんだか感心する、というような言葉を頂…

疾走! 千マイル急行(上・下)(小川一水・ソノラマ文庫)

★★★ 飛行機の次は蒸気機関車。小川一水のサイトに設定資料としてイラストがあるが、装甲列車でかすぎ! しかしやっぱり蒸気機関車って力強くていいなぁ。広大な大陸を縦横無尽に走り回るその姿だけできっとマニアな人は飯三杯! 電車で長距離の旅をしたくなり…

ハイウイング・ストロール(小川一水・ソノラマ文庫)

★★★ イカロスでは人がそのまま空を飛んでいたが、今度は飛行機。しかもレシプロ! 男気あふれる(?)かっちょいいお姉さんジェンカが素敵。世界設定はRPG的で、しょぼい飛行機を改造してレベルアップしながら世界をまわるあたりはまさにゲームの世界。なんと…

イカロスの誕生日(小川一水・ソノラマ文庫)

★★★★ ※ネタばれあり! 図書館で小川一水まとめ借り。背中に翼(モノノベ器官)をもつイカロス達の物語。ブラッドベリの『さなぎ』を思い出させる設定だが、なにぶん明るく力強い。とにかく空を飛ぶ喜びが一杯。小道具的に登場する数々の飛行機械も楽しい。し…

ブルーハンマー(ロス・マクドナルド著、高橋豊訳・ハヤカワミステリ文庫)

★★★ 展開がいささかご都合主義的だが、これはハードボイルドの常かも。謎の展開よりもその周囲の在り様や登場人物の世界に対する姿勢こそがハードボイルドの骨肉だし。読了に時間がかかりすぎた感も。のんびり読みすぎたな。 ブルー・ハンマー (ハヤカワ・ミ…

ブルースカイ(桜庭一樹著・ハヤカワ文庫)

★★★ カバー帯ともに空色というかっこいい装丁。内容は時間旅行ものの変形で、3つの短編からなるが、そこを一人の少女が貫いていく、という構成。『少女』がテーマらしいが、そこはいまいち。第三部の日常的な部分がほのぼのしていて、そこで★半分稼いで三ツ星評…

老ヴォールの惑星(小川一水・ハヤカワ文庫)

ギャルナフカの迷宮 ★★★半 老ヴォールの惑星 ★★★ 幸せになる箱庭 ★★★ 漂った男 ★★★ 面白いSFに出会えた喜び。ハヤカワから『第六大陸』(未読)が出たときから気になっていたが、今回ようやく手を出してみて大正解。全部で4本の短編が収録された本書、表題の…

サマー/タイム/トラベラー1、2(新城カズマ/早川文庫)

★★★★半! タイムトラベルものジュヴナイルSF小説。タイムトラベル(以下TT)もののリファレンス的側面も強く(何しろ作中で登場人物たちが関連書籍を集めまくる)、入門(?)にもってこい。読み始めはいろいろなところからの引用(それはもう盛りだくさんで…

監督不行届(安野モヨコ/祥伝社)

★★★★ 前から読みたかった本書、けろ氏より借りて読む。予想通り相当におかしい。庵野秀明の腹がなんともチャーミング、愛にあふれた一冊。 監督不行届 (Feelコミックス)作者: 安野モヨコ出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2005/02/08メディア: コミック購入: 7…

ミミズクとオリーブ(芦原すなお/東京創元社)

★★★ 読了して解説を読むまで、「青春でんでけでけでけ」の作者であることに気づかなかった。と、まぁそれはどうでもいい。軽い語り口と、大げさに過ぎない事件と、いささか古風な奥さんが素敵な一冊。短編の集成で、続巻もあるらしい。収録作では「梅見月」…

さらばカタロニア戦線(上・下)(冬川亘訳、スティーヴン・ハンター著/扶桑社)

★★★ 初盤から中盤にかけてが盛り上がって面白いが、終盤は失速気味。全体を俯瞰すると何が面白かったのかよく分からないのだが、翻弄される登場人物たちの熱に浮かされたような奔走ぶりがよいのだろう。舞台は冬だったりもするが、だらだらと汗を流して読む…

ロデオ・ダンス・ナイト(ジェイムス・ハイム著、真崎義博訳/ハヤカワ文庫)

★★★★ テキサスの片田舎で発見された白骨死体。やがて10年前の夜に失踪した大物牧師の娘の遺体であることが判明する。遺体の発見を期に少しずつおかしくなっていく町。引退したテキサス・レンジャー、ジェレマイアが事件解決の為に協力を要請されるが。事件は…

スラムオンライン(桜坂 洋/早川文庫JA)

★★★ オンライン格闘ゲームに夜毎熱中する主人公。オフラインで煮え切らない恋愛を進行させているが、情熱の在処はネットの向うだ。ただひたすらに、遮二無二、戦うためだけに戦う場所、バーチャタウンで切磋琢磨する主人公の分身であるが、ある日凄腕の「辻…

幼年期の終り(アーサー・C・クラーク、福島正実訳/早川文庫)

★★半 いまさら読む古典中の古典。やっぱり時代を感じるなぁ。バイアスかかりまくっている様子が今は痛い。当時はタイムリーというか、かなりセンセーショナルな内容だったと思うのだが。しかし、やはり白人って弱いよなぁ。大古典なのでネタばらしまくります…

θは遊んでくれたよ(森博嗣/講談社ノベルス)

★★★半 久々に乗り気な萌絵嬢と、死体が苦手な医学生ラブちゃん、必至に携帯電話を復旧させようとした犀川先生に★半分。連続して起こる自殺と見られる事件、その遺体のどこかに記された赤いθの一文字。果たして彼らに共通した、死に至った理由はあるのか。人…

ジオブリーダーズ11巻(伊藤明弘/少年画報社)

★★★★★ 朝から大興奮。今回も激しく萌える燃える進行、高見ちゃんアーンド主任大奮闘うおーっ! 10巻ラストで被弾した田波くんは三途の川でおばーちゃんに再会。一方S率いる化猫達が攻め入る神宮司重工ではハウンドと神楽総合警備が迎え撃つ。吠える対戦車ラ…

十二国記シリーズメモ

4月24日以降、記録をつけていなかった。以下、再読終了。 東の海神 西の滄海 十二国記 (講談社文庫)作者: 小野不由美出版社/メーカー: 講談社発売日: 2000/07/14メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (53件) を見る 風の万里 黎明の空…

東の海神 西の滄海(小野不由美/講談社文庫)

★★★★ 延王尚隆と延麒六太の登極後の話。ふらふらと遊び歩いて公務をこなさない(ように見える)延王に対して立ち上がった州公の息子斡由(あつゆ)。義に満ちた民思いの主として評される斡由はしかし...。ラスト付近、王であることについてかなり熱く書か…

風の海 迷宮の岸(小野不由美/講談社文庫)

★★★★ 既読だが本棚に見当たらず、金曜日に購入。そうだったそうだった、シリーズ中最も不遇な麒麟泰麒(たいき)が、王を選ぶまでの話。泰麒かわいいんだ。しかもこの後、泰麒はさんざんな目に遭うわけで、作者が恨めしいくらい。未だ彼がどうなるかは書かれ…

月の影 影の海(下)(小野不由美/講談社文庫)

早速下巻を読了。やはり面白い。後半にいくに従って盛り上がること、陽子が王であることを受け入れ、自己を見つめ直していくまっすぐな姿に目元が熱くなる。主人公をいぢめるだけいぢめておいて立ち上がらせるから、感動が大きいんだよねぇ。作者に踊らされ…